第166章

前田美咲は一瞬、言葉に詰まった。

「えっと……私、部長を送っていこうと思ったんですけど……田中社長が――」

それ以上は、佐伯清司の顔色がみるみる険しくなっていくのを見て、喉の奥に飲み込んだ。

――私、やらかした? 本当に?

佐伯清司はもう椅子に座っていられなかった。スマホすら手に取らず、そのまま立ち上がって外へ向かう。周囲の同僚が何事かと視線を寄せた。

前田美咲は内心で舌打ちする。男の嫉妬なんて、火がついたら女に劣らない。むしろ理性のタガが外れるのは、男のほうが早い。

慌てて追いかけ、廊下で佐伯清司の前に回り込んだ。

「どこ行くの?」

「送っていく」

冷えた声。

こんな不...

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